リンク販売は是か非か

公開日:2009/1/13
執筆者:鈴木 謙一

ある人から、僕の持つ媒体でリリースしたばかりのサービスを紹介してもらえないかという問い合わせがありました。

サービスの内容は簡単に言うと、「質の高いサイトから有料でリンクを張る」といういわゆるリンク販売です。

あらかじめ断っておきますが、この記事では「リンク販売は、正しいか・正しくないか」を主張することはしません。
理由は後で述べます。

僕がこの方とメールでやりとりして、非常にショックを受けた部分があります。

僕の「このサービスはグレーなSEOですね」という一言に対する反応です。

鈴木様のおっしゃるグレーとは、具体的には何がグレーとみなされるものなのでしょ
うか?

SEO業者さんにしても○○○○から被リンクを送ることは通常されており、
私としては特に法律に反する商売を行っているとの認識はないのですが、
どのようなリスクが発生するとの見解をお持ちでしょうか?

※一部伏字

唖然としてしまいました。

SEO業者がやっていることはすべて正しいのか?
法律に反していなければ問題ないのか?
有料リンクのリスクを知らないのか?

特に強烈なインパクトを受けたのは、3つめです。
この方は、リンク販売が検索エンジンのガイドラインに違反する可能性があることをまったく認識していないようでした。

ただしGoogleは、すべての有料リンクを禁止しているわけではありません。

すべての有料リンクが Google のガイドラインに違反するわけではありません。リンクの売買も、検索結果の操作でなく宣伝を目的として行われる限り、ウェブ上での通常の経済活動となります。

Google では、過度のリンク交換や購入したリンクでの PageRank の転送など、検索エンジンの結果の操作を目的としたリンクについては評価を下げるように努めています。

簡潔に言えば、ランキングを上げることを目的としたリンク販売を禁じています。

自分たちだけで有料リンクを発見することが難しいので、密告制度も導入しているのです。

Googleのスパムハンターチームの隊長である、Matt Cuttsは、2009年のサーチトレンドについて語ったインタビューの中で、ガイドラインに違反している有料リンクを発見した場合は、「リンクの価値を下げるかゼロにする」あるいは「販売サイトのツールバーPageRankを下げる」として断固とした対応をとることを明言しています。
(余談ですが、このインタビューでMatt Cuttsはウェブスパム以外にも、2009年の予測として、モバイル、クラウドコンピューティング、パーソナライズ検索の普及などについて参考になる発言をしています)

有料リンクに対するYahoo!やMicrosoftのスタンスは、Googleとは違いますが、それでも検索結果を操作するためのリンク販売には否定的です。

この記事のタイトルは、「有料リンクは是か非か」ですが、僕はここで白黒ハッキリつもりはありませんし、そんな立場にもありません。
それに、清音さんが解説したAaron Wallのインタビューの記事でも書かれているように、リンク売買がどこまでセーフでどこからがアウトなのかは明確に分けることはできません。
グレーゾーンが存在するのです。

僕がなぜ、今回有料リンクの問題を取り上げたかというと、「売る側も買う側も、有料リンクが持つリスクを十分に認識した上で取引してほしい」と思ったからです。

売る側としては、検索順位を操作するためのリンク販売はガイドライン違反で、ペナルティを受ける可能性がある
買う側としては、投資効果に見合った効果が得られるとは限らず、リンク購入はガイドラインに違反している

ということをわきまえていてほしいのです。

まじめにサイト運営しているWebマスターたちが、「このリンクを買えば、検索順位が上がる」と煽られて、何のリスク説明もないまま、リンクを売る業者にだまされてほしくありません。

今回僕とやり取りしたリンク販売サービスの代表の方は、リンク販売がガイドラインに違反していることすら知りませんでした。

「SEO業者がやっているから」、「法律に違反していないから」、
失礼かもしれませんが、こんな人にSEOサービスを取り扱ってほしくありません。

残念なことに、SEO業者が率先してスパム行為を行っているのが事実です。
SEO業者のサイトのバックリンクを見れば一目瞭然です。

ちょっと感情的になってきましたが、怒っているのでなく逆に悲しく感じています。
SEOが正しく理解されていないと(「正しく」というのは、Webでの健全な活動であるということ)、あらためて実感してしまったからです。

百歩譲って、インデックスからの削除を覚悟の上でスパムSEOをするのは良しとしましょう(良くないですけどね)。

僕の知人に、アフィリエイターであると同時に、SEOコンサルティング業務を行っている方がいます。
アフィリエイターとしては超一流でバカ稼ぎしています。
Yahoo!カテゴリに登録される優良な情報提供サイトをいくつも持ちつつも、きわどいSEOにもチャレンジして消されたサイトは、数知れず。

ですが、クライアントに対しては決してリスクのあるSEOは提案しません。
クライアントが自分で、「こんなにたくさんリンクをこんな安価で提供してくれるサービスを見つけたんですがどうですか?」と聞かれたときにも、「そういうのはやめたほうがいいです」と相手にもしません。

自己責任の範囲内ではギリギリ(時には行き過ぎ)のSEOを仕掛けますが、自分以外に対してはそういうSEOの危険性をしっかりと理解させ、勧めるどころか却下します。

Sphinn Japanにスペシャルユーザーとして参加してくださっているアイレップの渡辺さんが、「正しいSEO対策とは?」という非常にディスカッションが盛り上がった記事のコメントで、次のように発言されています。

現在の日本では、SEOは半ば広告的な扱いで位置づけられているためか、(他のネット広告同様)即効性を期待する人も多いのも事実です。しかし、一方でそれを実現するには相応のリスクを伴うことを理解していらっしゃらない方も多いのです。サイトがインデックスから消滅した、ランキングが急激に落ちて1年待っても復活しない、といった色々な相談を受けている経験からも、やはり発信する情報は、”正攻法”を中心にしていますし、クライアントから求められても悪質な手法は教えないですし、提供もしないです。

ちなみにFX に限らず、アフィリエイターが多数競うキーワードは総じて、(検索エンジンからすると)望まれない手法を用いているのが多いのですが、アフィリエイターにできることが必ずしも企業でも採用できるわけではないので、立場や組織/個人の違いは理解する必要があると思います。

さすがに、業界第一人者です。
まったくそのとおりだと感嘆しました。

渡辺さんですから、黒いSEOもたくさん知っているはずです。(笑)

でも、それをクライアントには実践しません。
クライアントの企業としてのモラルを損ねるようなSEOは行わないと、実際にお会いしたときにもおっしゃっていました。

今回、僕のところにきたリンク販売サービスは、おそらく企業ではなくアフィリエイター向けですが、それでも説明はすべきでしょう。
アフィリエイターだからといって、リスクを説明する必要がないとはなりません。

えっと、話があちこちに飛んで自分でもこんがらがってきました。

言いたいことは、

  • リンク販売をはじめとして、検索エンジンが認めていないSEOが何か知っておいてほしい
  • それを実践するのは自己責任
  • 純粋無垢なサイトオーナーを説明なしにだますな

ついでに、

  • SEO業者がスパム行為を行うな!

です。

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